<P1> 第44回 視覚障がい乳幼児研究大会 京都大会 ◆ 会場:京都ライトハウス 4階 あけぼのホール ◆ 形式:会場での現地開催+ZOOMを使用したオンライン開催 【大会プログラム】 10:00~10:10  開会式                                      10:10~12:00 基調講演 講師:小児科医師 小川 弓子 (福岡市立心身障がい福祉センター センター長) 「視覚障がいとともに歩むということ ~発達支援の立場からと当事者の立場から~」 12:00~13:00  休憩 13:00~14:00  実践報告 「あいあい教室 放課後等デイサービスの取り組みについて」 ・報告 古川 千鶴・谷口 由佳(京都ライトハウス あいあい教室) ・保護者座談会            14:00~14:15  休憩 14:15~15:45  シンポジウム テーマ『視覚障がい関係の専門機関との連携と今後の課題』   ・シンポジスト  :島 久美(京都府立盲学校 視覚支援センター)             冠  雄祐(京都市立北総合支援学校 支援部)                      古川 千鶴(京都ライトハウス あいあい教室) ・コーディネーター:中満 達郎(福岡市立心身障がい福祉センター)   15:45~16:00  休憩 16:00~16:30  口頭発表 発表① 高橋 基就・赤井 愛(大阪工業大学) 「『おしゃべり知』におけるSNSの活用 〜保護者・療育者間のノウハウの共有を目指して〜」 発表② 稲葉 純子(いなば眼科クリニック) 「京都ロービジョンネットワークの多職種連携」 16:30  閉会式 16:40~17:00 総会 ★11月19日(土)15:30~17:00『施設見学ツアー』 【見学施設】 ・京都府立盲学校 花ノ坊校地 資料室 ・京都ライトハウス館内/あいあい教室 <P2~4> 基調講演 『視覚障害とともに歩むということ   ~発達支援の立場からと当事者の立場から~』 福岡市立心身障がい福祉センター センター長 小川 弓子(弱視、全色盲児の母) 1)障害の考え方  障害を考えるときに、「視力は〇〇だから、これこれができない」「麻痺の状態が〇〇だから、これは無理だろう」と従来は障害程度によって社会参加の可能性を検討されていました。しかし、障害のとらえ方は、その人固有の問題だけではなく、社会的・物理的・制度的な多くの環境因子によって異なり、それぞれの背景によって影響を受けるという考え方に変化し、どういった社会に私たちは生きているかという視点が盛り込まれました。それに加えて、平成28年には障害者差別解消法がスタートし、個々に応じた配慮の必要性が明文化されました。理解の無い支援はなかなか当事者には届きにくく、支援の基盤となる障害特性を理解することが大変重要となります。今回は、最初に視覚障害への「基礎知識」と眼疾患を説明。加えて、疾患だけではなく当事者のおかれやすい環境、そして家族の抱える気持ちを説明。まず、障害への知見を深めていただければと思います。 2)見る力 見え方を左右するのは、一番は「視力」です。これは形を見わかる能力(2点弁別力)で、文字情報の入力や行動範囲の広がりに大きな影響をもたらします。それ以外に「視野」「光覚」「色覚」なども見やすさに影響をもたらします。 3)視覚に障害をもたらす疾患:画像:スライド参照 4)視覚の成育への影響 ・運動発達:自己感覚だけでは自分の身体地図を獲得するのに時間がかかる。かつ自分の体と周囲との関係が認識しにくいために、体の動かし方がぎこちない、移動などの動きに慎重。 ・認知発達:大きい、小さい、暗い、明るいなどのイメージの把握、形態の理解を獲得するのに時間がかかる。       視覚を使っての模倣がうまくできない。 ・コミュニケーション:表情や場の雰囲気など言語以外でのコミュニケーションがとりにくい。概念の理解が難しい場合には、共通言語に影響。 ・視覚の問題が先天的か後天的 視覚的情報によりある程度のイメージが形成されている後天性か、全く既存のイメージが無い先天性かで、影響には違いが生じる。 5)視力障害から発生する二次的な問題 ・成育環境に対して   周囲の理解不足→自尊感情。社会観、人生観への影響 ・愛着行動に対して   見えないことでの不安→コミュニケーション、社会性の構築 ・視覚情報の少なさに対して   情報不足、誤った知識→経験不足、学習の問題 ・視覚模倣の欠如に対して   日常の模倣による技術、動作の習得の困難さ→自主性、積極性の欠如 6)「障害」がもたらす子どもの心の発達への影響 個人は社会と関わって生きていきます。その個人と社会を最初につないでいくのは家族です。まず子どもは生まれて一番小さな社会の単位:家族の中で自分の居場所をつくり、愛されることで自己肯定感をもち、勇気をもって社会へ踏み出していきます。子どもに障害があればなおさら、家族の受け止めが社会へ出ていくための大きな力となります。子どもの心の成長をみてみましょう。 ・親の受容の問題  慢性的悲哀 将来への期待と現実との落差が大きいほど不安定へ ・親と子の愛着形成:安全感の育成問題 慰めや喜びの共有 援助や楽しみの共有 歓迎と行動の支持 安全と危機からの回避 ・子供における心理社会的発達課題  社会や人への基本的信頼関係の構築が自律性、自発性、勤勉性の基礎 7)自分自身の子育ての経験から 子どもを育てることは、障害のあるなしにかかわらず、たいへんなことです。また、親と子、家族という関係はそれぞれのライフサイクルに添って姿を変えながら、続きます。とくに、子どもが生まれてから自立するまでの期間が親と子がそれぞれ成長していく大切な時期でしょう。特に、障害のある子どもを持った親は、自分がどこに向かって子育てしていくのか不安と迷いの連続の日々です。 しかし今、療育を学び仕事としてかかわって、自分の子育てを振り返ってみれば障害に対して少しでも支障となることを軽減しよう、工夫しようと努力しましたが、根底にながれる子どもの自立へ向けての思いは、子育てというもの全部に共通するものであったように思います。障害をもつ児は「療育」という発達支援を受けることが多いと思いますが、「療育」は従来の医療モデルから生活モデルへと変化し、「よく配慮された子育て」、家族や学校、地域も巻き込んだ豊かな「生活」を営んでいくことへの支援に代わってきています。 一人の視覚障害をもつ子どもを育てた母親である立場、家族の視点から障害のある子どもを育てるという思いを伝えたいと思います。 <P5~16> パワーポイント資料 <P17~27> 実践報告 「あいあい教室 放課後等デイサービスの取り組みについて」 京都ライトハウス 視覚支援 あいあい教室        古川 千鶴・谷口 由佳 (1)あいあい教室の紹介 ・京都ライトハウス ・0歳~就学前・・・児童発達支援:親子通園(居宅訪問・保育所等訪問/京都府内の訪問療育) ・小学1年生~高校3年生・・・放課後等デイサービス ・対象:視覚に障がいのある、または不安のある子ども ・地域:京都府内、あるいは近隣の他府県から通園・通所 (2)放課後等デイサービスを始めた経緯  ・1976年  あいあい教室 開設 (0歳~就学前の親子通園) ・2003年  小学1年生までの受け入れ 開始 ・2011年  土曜日の開室(平日に就労する保護者の支援/職員の働き方) ・2012年  放課後等デイサービスとして、小学1年生を受け入れ ・2015年  「放課後等デイサービス 検討委員会」(視覚障がい児にとっての放課後支援の必要性) ・2019年  放課後等デイサービスの事業拡大(小学生~高校生)         ・2021年8月 ライトハウス北側に新施設完成 (3)あいあい教室 放課後等デイサービスの実践報告 放課後等デイサービスの拡充から4年。在籍は60名を超え、京都市を中心に、京都府や近隣の他府県からも利用があります。2021年8月末に法人本館北側の土地に新居室が完成し、2021年10月に引っ越しを行いました。居室内には、プレイルーム(遊びや食事スペース)や台所、多目的トイレや相談室等が設けられ、より多様な活動が可能となりました。  ①支援内容 【子どもたちへの支援】 ・職員との信頼関係の中で、子どもたちが安心して過ごし、のびのびとやりたいことができる、仲間と楽しむことができる。 ・社会経験・生活経験を広げられる。 ・職員や仲間と相談したり、一緒に考えたりしながら、それぞれのやりたい活動や目標が実現していける。 ・視覚補助具の活用や点字・白杖など、学習や生活に必要な力を伸ばす。 ・食事、排泄、身支度等、日常生活に必要な力を伸ばす。 【保護者の方への支援】 ・家庭や学校、就労などに関する相談に対応し、ライトハウス館内の資源を活用しながら情報提供を行う。 ・学習会の開催や保護者同士の情報交換、交流ができる機会を作る。 【地域生活への支援】 学校や学童、他の福祉サービス事業所等での集団生活が安心して送れるよう、関係機関と連携を取りながら総合的に支援する。 【関係機関との連携について】 地域の学校やアイリス教室などの通級指導、盲学校、支援学校、他の福祉事業所と連携を取り合い、共通理解を深めるとともに支援の充実へとつなげる。 ②活動時間 開室は9時から18時で、給食や一部のおやつは同法人のFSトモニー(就労支援事業所)を利用しています。 【平日の放課後】 14:30~16:00 あいあい到着 自由時間・宿題等 16:00 はじまりの会(プログラム活動・おやつ等) 17:00 帰りの会 【長期休暇】 10:30 朝の会・まなびタイム(宿題・課題遊び) 12:00 昼食・自由時間 13:45 活動タイム(集団遊び・生活体験) 15:00 おやつ 16:00 帰りの会 【土曜日】 京都府内や他府県からの利用も多く、午前と午後は別の子どもが通所します。 午前グループ(10:00~13:00) 10:30 はじまりの会 プログラム活動 12:00 給食 13:00 帰りの会 午後グループ(14:00~17:00) 14:30 はじまりの会 プログラム活動 16:00 おやつ 17:00 帰りの会 ③活動プログラム 児童が仲間と共にいきいきと遊び、学び、楽しむことを目的にとした活動プログラムは月間予定で保護者に配信し、あいあい教室のホームページ、放課後等デイサービスコンテンツから常時閲覧ができるようにしました。活動は繰り返し取り組むことで初めてのことにも慣れたり理解を深めたり、子どもたちの力で内容が発展していきます。活動では館内のホールや教室等も利用します。また、同法人の生活介護事業所との交流や、点字図書館の利用等、館内資源を活用した取り組みも行なっています。 <22年度の活動カレンダー 8月・10月〉 ※カレンダーの画像あり ④活動の実践報告 【ウォークラリー】 ウォークラリーではラリーカードを持って、京都ライトハウスから公園までの道や公園内のポイントを巡ります。カードには子どもたちそれぞれの見え方や発達に合わせて点字や触察を使用しました。ライトハウス近隣にある物や四季を感じられる植物をポイントに入れることで子どもたちの新たな発見につながります。各ポイントでは、よく触ることはもちろん、タブレットや単眼鏡等の視覚補助具を使ってゆっくりと観察しました。 時には子どもたち同士で手引き歩行をする等、あいあい教室ならではの子どもたち同士の関わりがあります。 ※画像「ウォークラリーカード(点字や触察つき)」 【製作(カーネーション)】 5月の製作では、カーネーションを観察して特徴を知り、贈り物作りをしました。カーネーションの葉や茎、花びらをじっくり触り、色や匂いを感じたり、拡大読書器で拡大して見たり、みんなで特徴を伝え合いながら観察しました。実際の製作でも見本や手順を手元でしっかり確認し、思い思いの作品をできる限り自分の手で作れるように取り組んでいます。 ※画像「拡大読書器でカーネーションの茎と葉を観察」 ※画像「折り紙でお花づくりとラッピング」 【作って遊ぼう(ゴルフ)】 “作って遊ぼう”シリーズの一つ、ゴルフ遊びでは牛乳パックと新聞紙でゴルフクラブを手作りして遊びました。完成品で遊ぶ中で、何をするための物を作るのか実感してから作ります。“作って遊ぼう”シリーズでは他にもエアホッケーや的あて、凧やけん玉等に取り組んできました。できる限り本物に触れる、実体験をすることを大切に製作や創作活動を取り入れています。自分で作ったもので遊ぶことは道具の扱いに慣れたり、遊びのルールを知ることや友達と対戦する楽しさ等にもつながります。 ※画像「テープを長く伸ばして牛乳パックに貼る」 ※画像「作ったゴルフクラブで的を狙う」 【生活体験】 生活体験は、洗濯や傘の使い方、お金の観察等、普段の生活で起こりうる行為や動作をじっくり体験する活動です。“洗濯体験”ではまずは布巾を濡らして絞り、畳んで机を拭き、洗って干すところまでを体験。慣れてくると、泡を作って洗ってみたり、物干しから乾いたタオルを選んで取ったりと、少しずつ発展していきました。“傘体験”では、傘の開閉方法や傘の持ち方をゆっくりと確認。“濡れた傘の留め方”“傘を留めずに傘立てに入れるとどうなるか”“人に当たらないようにするにはどうするか”等、細かいところまで体験しました。 【実験(泡噴水・スライム・ゼラチン)】 夏は実験遊びや感触遊びをたくさんしました。実験遊びは“失敗しても大丈夫!”を合言葉に、繰り返し挑戦する中で工程や変化を一つずつ確かめ、自分で試行錯誤しながら取り組みます。スライムやゼラチン実験では、少しずつ固まっていく変化が指で触ってわかりやすかったです。この“実験 してみよう”シリーズでは、子どもたちの“どうなるかな?やってみよう!”の気持ちを大切に取り組んでいます。 ※画像「指で混ぜてスライムの固まり具合を確認」 ※画像「水を量って水と片栗粉を混ぜる」 【廃材(新聞ドーム)遊び】 新聞紙や段ボール等の廃材を使った遊びでは、まず新聞紙や段ボールその物をゆっくり触り、特徴を確認します。広げた新聞と自分の身体との長さを比べたり、どこまで小さく折れるか挑戦したり、新聞を叩いて音を楽しむリズム遊びやふわっと浮かせてキャッチするゲーム等をしながら感想を言葉で伝え合います。また、30枚以上の新聞紙を貼り合わせ、大きなドームをみんなで手作りしました。新聞紙を押さえる、テープを切る、貼る等、みんなで協力して作ったドームを風で膨らませ、中に入って遊んだ後は思い切り破いて脱出。他にも段ボール遊びでは、段ボールを組み立てる、中に入る、積んで高さ比べをする等、身近な素材も遊びがどんどん広がっていきました。 ※画像「新聞紙をテープでつないで大きなドーム作り」 ※画像「新聞ドームの秘密基地」 【お仕事体験】 ライトハウス館内の資源を活かして、館内で子どもたちとお弁当やお菓子の販売を行いました。オリジナルレシートや館内地図を作って、メニューを紹介しながら歩き、移動販売をする体験です。子どもたちは「本物のお金をもらうの?」「何て言えばいいかな」「絶対売るぞ」とドキドキとワクワクでいっぱいの様子でした。「いらっしゃいませ」「ありがとう」を繰り返すうちに少しずつ慣れ、声も次第と大きくなっていきます。普段はなかなか接点のないライトハウス職員とも関わりの場を持ちながら“放課後等デイサービス”から“館内”へ子どもたちの社会をゆっくり広げる機会となりました。お弁当は同法人のFSトモニー(就労支援事業所)に作ってもらい、売り上げを届けるところまで子どもたちも経験。子どもたちからは「すごく緊張した」「違う物も売ってみたい」と様々な感想がありました。 【クッキング(芋もち・おやつ作り)】 秋の芋もち作りでは、じゃがいもの形や色、どのようにできるか、どんな料理があるか等を学びながらのクッキングです。指で皮を摘まんでむく、つぶす、丸める等、一つ一つの工程をしっかり確認し、できる限り自分で挑戦することをポイントに取り組みました。大きく丸めたり、細長くしたり、小さい物をたくさん作ったり、思い思いの芋もちとなりました。“おやつを作ろう”シリーズでは、おにぎりやサンドイッチ等、簡単クッキングに取り組んでいます。クッキングを通して身近な道具の使い方や食材の特徴、調理工程や食材の色・形・匂い等の変化を知ることはもちろん、汚れた時の対応や洗い物の方法、エプロンの着脱等、様々なことが経験できます。 ※画像「茹でたじゃがいもの皮むき」 ※画像「ジップロックにじゃがいもと片栗粉を入れる」 ※画像「ゆで卵の殻むき」 (4)放課後デイの事業拡大を通して ・京都ライトハウスが、視覚障がいの乳幼児から高齢者まで切れ目のない支援ができるようになった。 ・あいあい教室に繋がることで、安心して次のステージへ移行できたらいいな・・・ ・これからのライフステージの中で、困った時に相談しやすい場所に、なれたらいいな・・・ (5)視覚障がい児にとっての放課後支援とは  🐤 居心地の良い場所(学校でも家でもない)  ・リラックスできる  ・頑張りすぎなくていい  ・個性や自由が認められる  ・うれしい、楽しい、大好き!(遊びから始まるワクワク感)  ・周囲の状況が分かりやすい(室内の環境・情報)     🐤 生活体験が充実し、社会性が広がる  ・分かる楽しさを実感できる  ・「自分でできた」達成感、充実感→ 自己肯定感が高まる  ・子ども集団や大人から学ぶ    友だちのことを知る→ 協力する気持ち  ・社会を知っていく  🐥 保護者の声  ・地域では孤立しやすい  ・学校生活や進学、将来への不安  ・情報が入りにくい  ・他の視覚障がい児がどうしているのか、分からない  ・もう疲れた・・・  🐤🐥 学齢期の支援   子どもたちや家族・地域生活が変わる中で、大切な支援とは何か・・・? 保護者座談会   森 尚子(保護者) 今年の春、盲学校を卒業し 就労継続支援B型に 週5日通っています。 彼女は 普通に生まれたのですが 生後45日に 授乳中に 真っ青になり 心停止。わけがわからないまま そして 病名が何なのかわからないまま 病状にあわせての加療、ほぼ一年入院、私も付き添い入院でした。 11ヶ月の時、大学病院に転院し、そこで 再度徹底した検査後、「拡張型心筋症・高脂血症・脂肪肝・眼振」この単語をドクターが英語でネット検索し Alstrom syndromeがひっかかり 1歳直前で やっと病気が何かわかりました。当時でまだ 患者は亡くなった方も含め300人程度、そしてAlstrom症候群は 今後 目が見えなくなること(コーンロッドジストロフィー いわゆる網膜色素変性症)、感音声難聴、肥満、糖尿病、腎臓、肝臓、ホルモン関係、脊柱側弯…まだまだあります。 あいあい教室に行くまでは 羞明や眼振は気になりましたが、2歳まではとにかく生きることが最優先でした。 2歳になる頃ネットで調べて見つけた あいあい教室に通いはじめ 3歳からは2学年上の兄と同じ保育園に通いました。その頃は遮光の遠視レンズで矯正視力が0.04ぐらいでしたが 羞明も強く 数字ほど 見えていないのではないかと感じていました。 その頃は盲学校の幼稚部に、とても魅力的な先生がおられたので 通わせたい気持ちもありましたが、兄の気持ち、生活スタイルを考えると 妹がうまれてすぐに 妹も私も急に帰って来なくなった、退院しても 療育に、通院にと バタバタとする日々。兄が 幼いながらに 「他の子たちのように妹と同じように保育園にいきたい」という気持ちがありました。 保育園には看護師さんもおられたのも大きな決め手でした。 年少の時、病気の患者会のようなものにアメリカに行きました。世界中から同じ患者と家族、医師、研究者があつまる 5日ほどの日程でした。そこでの病気の情報と気づきはとても大きかったです。 目の状況、体のことを思うと(10歳ぐらいには見えなくなる、思春期以降 心筋症の悪化で もしかしたら…)小学校は盲学校へと 早くからおもっていました。年長ぐらいには 盲学校の教育相談にも 通いだし 当時見てもらった先生は高等部卒業まで 見守ってくださいました。 兄がいる事で 『小学校とは』『小学生の生活』『学習』『わ放課後の過ごし方』などを見ていると やはり、彼女も 兄も 「自分らしく生きるための生活 学び」は 彼女が盲学校に行くことだとおもいました。兄もうっすら感じていたようです。 盲学校へは 朝7時過ぎに家を出て スクールバスで登校、下校もスクールバスで家に帰ってくるのは16時半頃。 宿題をしたり、次の日の準備をしたら 18時になります。 小学部の頃、ポツポツと放課後ディが出来始めたのですが スクールバスのバス停 放課後デイの方に迎えにきてもらっても 放課後デイで過ごす時間は30分もありません。なにより 学校で学んだことを振り返る、宿題、身の回りのことをすることが 最優先でした。 明日見えなくなるかもしれない、死んでしまうかもしれない、やり残したことがないようにしようと 決めていました。 高等部になる時、あいあい教室放課後デイサービスができ、 お迎えに往復2時間かかったとしても 彼女が 放課後デイを利用したと思えるだけの時間 利用できるようになりました。 学校卒業が近くなってきて 社会人になる前に ライトハウス内のいろんな施設などと連携してくださったことは 大変ありがたいことでした。 藤田 典子(保護者) ① 【子どもの状況について】 両目ともに未熟児網膜症の為、全盲です。 病名を聞いた時は、見えない子の子育てに不安はありました。 障がい児の子育てをどこからどんなふうに手をつければいいのか、どんな支援制度があるのか、どこに相談をすればいいのか、色々な悩みが次々と出てくる毎日でした。でもたくさんの出会いを通してこの時に感じていた不安や悩みは少しづつ消えていきました。 ②【乳幼児期について】 一歳から五歳まであいあい教室に、三歳のころから盲学校の幼稚部に通っていました。 一歳から療育なんてまだ早いのかなと思っていましたが、早期療育の大切さを知りました。何をするにも一つ一つ丁寧に声掛けをしてもらい、何度も何度も繰り返して教えてもらう。 手を眼にする為に、物の触り方、触り方だけではなく触りたい意欲も育ててもらう。一つの事ができる様になるまでに、とても時間がかかる。一生できないんじゃないかと気弱になってしまう事もあったけど、時間をかけて丁寧に療育して頂いた事は確実に息子の生きる力になり、次の一歩につながりました。 焦らなくても息子のペースでゆっくり成長していけばいいし、社会に出ていくまでまだまだ時間はあるし大丈夫。私の気持ちにまだ余裕があった幼児期でした。 ③【学童期について】 小学部から高等部まで盲学校で学びました。日常生活を中心とした授業内容の他、点字や数などの勉強は楽しく伸び伸びと過ごすことができました。 放課後デイサービスも利用し始め、学校以外の人と関わる事ができました。週に一回だけですが放課後デイに行ってる間は、私も下の子と2人きりの時間を作る事ができました。小学部、中学部を卒業し高等部に上がった頃から少しづつ、私の中で焦りを感じはじめました。盲学校で学べる期間はあと三年しかない。三年後社会に出すにはまだまだ心もとない感じがする。もっと色んな事を教えてやりたい、どこかにそんな場所がないだろうか?と思ってた矢先、あいあいの放課後デイサービスが開設されました。 タイミングが良すぎる事に驚きと嬉しさがありました。 ④保護者に伝えたい事 毎日の子育てお疲れ様です。 ここまでの自分の子育てを振り返ってみて、思う事はもっと小さい頃から家の手伝いをさせておくべきだったなぁ。という事です。 生活の中で学べる事がもっとあったはずなのに、日々の忙しさを言い訳にしてさせてこなかった事に少し後悔をしています。出来るお手伝いからでもいいのでさせてあげて下さい。繰り返しやってきたことは必ずいつかは一人で出来るようになります。それが子供の生きる力になるし社会に出た時にも必ず役に立つものだと思います。 清水 英(保護者) ①子どもの状況 超低体重出生児、歳の離れた兄、姉のいる第3子です。 生後3か月で未熟児網膜症を発症、両眼バックル術、生後6か月時に左眼硝子体手術を受け、左眼小眼球視力なし、右眼視力0.2、中学まで左眼に表装義眼を装用していました。 見え方に左右差があるため距離感がつかみにくく、歩行時に左に寄る傾向があり、大きな音や突然来るものに敏感に反応します。本人の意向で今は白杖を携帯しています。 早産を免れない状況だったため、医師から眼に障害が残る可能性が高いことを告げられていました。視覚障がいに対しての覚悟はできていたと思いますが、漠然とした不安を感じていました。手術後の傷跡に負い目を感じたり、成長するにつれて顕著になったり発覚したりする障がいや疾患を受け入れることは更に難しいことだったと感じています。 ②乳幼児期 哺乳力が弱く小食、肺高血圧症と診断され1才半まで常時酸素を吸入していました。 好奇心旺盛で玩具の至近距離に顔を近づけてあらゆる角度から色や音を楽しんでいました。 NICU父母の会であいあい教室の存在を知り、メールを送り見学に至りました。あいあいで教わった「先を見通して」考えることは今も重要な視点となっています。保護者の部屋は、情報交換だけでなく、笑いあり涙あり、私にとっては本音で話せる貴重な場所でした。 保育所は数か月の一時保育の利用を経て、地元の公立保育所に年少から入所しました。他の子どもたちより小さく幼く、視覚的な弱さだけでなく体力的精神的に弱く幼いところをより丁寧に支援し保育していただきました。 ③学齢期について 地域の小学校に入学。1年~4年生まで弱視通級指導教室アイリスの指導を受け普通学級に在籍、1年時はことばときこえの教室を併用。4年の3学期に支援学級での体験を経て、5年時に支援学級に移籍しました。放課後は6年間学童を利用し、併設の特養や地域との交流事業にも積極的に参加しています。 5~6年時に聴覚障害児の放課後等デイサービスに通所していたこともあり、難聴学級のある中学校区に引越し、ほぼ知人のいない中学校に入学し、3年間支援学級に在籍しました。 放課後は美術部に所属しましたが数カ月で行かなくなり退部、2カ所の放デイに週5で通所していました。 本人の「勉強したい」という思いもあり盲学校高等部普通科(教養・就労)コースに進学しました。卒業時、「盲学校がこれまでで一番楽しかった!」と話している様子がとても印象的でした。 <P28~30> あいあいつうしん2022年4月号より抜粋 「あいあい放課後等デイ・かわら版」 放課後等デイサービスの初めての卒業生に、共に過ごした1年を振り返りながらの日々だった3月。今月のかわら版では、卒業生保護者の皆さまから頂いた心あたたまる、そしてこれからの励みになるメッセージをお届けします。 ●保護者の皆さまからのメッセージ● A さん 感謝の気持ちと、寂しさと、何から伝えていいのか…気持ちがたくさんありすぎます。幼児の頃は弱視だったAは、放課後デイには全盲で通いました。ちょうど見えなくなった頃は まだあいあい放課後デイはありません。その後、あいあいに放課後デイが出来、とても嬉しいありがたいことでした。 盲学校中学、高等部になると放課後の時間、学校とは違う学び、知ること、Aが出来たらいいなと思うことは幼児の頃と変化し、親として助けて欲しいと思うことも変わってきていました。 学校ではパーキンスのみで点字学習でしたが、あいあいでは点字板で点字の練習。嬉しい、上手になりたいと、短い時間でも取り組ませてもらえ、高校生だけの時間(休校の時や盲学校テスト期間は午前中で下校)には、高校生には高校生の時間の過ごし方も、学校卒業後を見据えた取り組みは、『そういう事をして欲しかった、やらせたかった』と思う事ばかりでした。らくらくさんと交流したり、親は鳥居寮の方や京視協の方からたくさんお話しを聞いたり質問させてもらえる時間もつくってくださり、本当に感謝しています。 正直、片道1時間近くかかる送迎も10年前より母は疲れました。本当に…疲れます。それでもAには他の放課後デイとは全く違う『あいあい』。幼児のころに楽しみに通った『あいあい』と根っこの部分の視覚障がいの子にも親にも寄り添ってくださる他にない放課後デイ、居場所でした。 小さい頃は「やってみよう」「いつかできる」が高校生にもなると「今しかできない」「今がチャンス」となり、それを見逃さず職員みなさんで上手く取り入れて楽しませてくださいました。重複障がいのAには本当はあと2、3年程あいあいでの自立訓練があればいいな(あいあい大学!社会に出る前にあと少しもう少し学びたい)と、卒業が寂しすぎます。 本当に親子共にお世話になりました。ありがとうございました。 Bさん 盲学校入学と同時に待ち望んでいたあいあい教室の放デイが開設され、ホームグラウンドに帰ってきた喜びに胸を躍らせていたあの感覚は今も覚えています。そして、私自身が子ども以上に大きな大きな支えをいただいてきたことに深く感謝申し上げます。ホームグラウンドを離れようとしている今、言い知れぬ不安を感じていることは否めません。 療育を卒業後、「先を見通して」というあいあい教室での教訓を念頭に、進路を模索し選択してきました。その日常は、本人と支援して下さる方々にお任せの日々。特に、放課後や長期休暇のほとんどを放課後等デイサービスで過ごしたこの3年、あいあい教室では、成長期の不安な日々を幼少期にお世話になった大好きな先生に優しく大きく受け止めていただき、皆さんの愛情をふんだんにいただいて、気が付けば、心も身体も想像以上に逞しく成長していました。 今は4月から始まる就労生活に、ちょっとの期待と大きな不安を抱いているのかも知れません。きっと、遠くからの皆さんのエールをビビビビッーと感じて日々励んでくれることと思います。これからは、自分たちがあいあい教室やいろんな場所、いろんな場面でいただいてきたあたたかい心を、身近にいる人へと渡し繋いでいければと思います。大切な時間をともに過ごしてくださったお友達、先生、支援してくださった皆さん、ありがとうございました。皆さんが笑顔で明るい毎日を過ごされますことを心からお祈りしています。 C さん 幼児期を過ごした大好きなあいあい教室を、再び高校生から放課後デイサービスでお世話になりました。学校や家庭では出来ないような経験や勉強をたくさんさせてもらいました。息子もあいあいに通える日はとても楽しみにしていました。大宮交通公園でタンデム自転車に乗ったり、お昼ご飯を鴨川で食べたりした日のことがいい思い出になっています。 「目が見えない子どもをどの様に育てていけばいいのか?」、これからも思い悩む場面があると思います。私にとってあいあい教室は、日々の小さな悩みなどを相談でき、解決のヒントを頂ける場所でした。あいあい教室の先生方との出会いや、たくさんの心強いお母さん方との出会いが私の心の支えになっていました。春から、今までの学生生活とは違う新たな挑戦が始まります。息子が持つ秘めた力を信じ、親子で頑張っていきたいと思います。社会に出て何かに困った時、振り返ればあいあい教室がある。相談出来る先生がいる。共に成長してきた仲間がいる。それだけで思い切って前に進める気がします。本当に今までお世話になりました。ありがとうございます。 活動風景 ●旅立ち会● 卒業生の新たな門出を祝う“旅立ち会”では、この1年の思い出を和気あいあいと語り合いました。「あぁ、そんなことあったなぁ!」と笑顔で話す様子に嬉しさと寂しさが込み上げます。共に過ごした仲間からのメッセージや活動風景をまとめた“おめでとうムービー”上映会、卒業生への記念品(アルバムやハンカチ)贈呈など、あっという間の笑顔あふれる会でした。卒業生の皆さん、今までの日々に自信を持って自分だけの人生を歩んでいってください。そして保護者の皆さま、これからもライトハウスが皆さまと共にあり続けるよう努めていきますので、いつでも気軽にご相談ください。ずっと応援しています! ※画像「記念品のアルバムやドットテイラー付ハンカチなど」 <P31~34> シンポジウム 話題提供①「地域で学ぶ視覚に障害のある子どもへの支援と他機関連携」     京都府立盲学校 京都府視覚支援センター  島 久美 1.京都府立盲学校について 明治11年5月24日京都府立盲学校の前身となる京都盲唖院が開設(日本初の盲学校)  京都市北区千本北大路付近に2校地(花ノ坊・大徳寺)  幼児児童生徒数 37名      幼小中学部(大徳寺校地)      幼稚部2、小学部3、中学部6      高等部(花ノ坊校地)      本 科:普通科12、保健理療科2、(音楽科)      専攻科:普通科1、保健理療科5、理療科5、 研究部理療科1、(音楽科) 平成27年 高等部本科普通科に京都フロンティアコースを設置 平成30年10月31日 本校と府立聾学校が所蔵する3,000点の歴史資料が重要文化財の指定を受ける。 2.京都府の視覚障害にかかわる支援体制 乙訓、南丹、中丹、丹後教育局管内→京都府視覚支援センター(盲学校内)が担当  山城教育局管内→京都府スーパーサポートセンター (宇治支援学校内)が担当 *両機関で定期的な連絡会を開催し、情報の共有や研修を実施。また、必要に応じて相談・支援を連携しながらすすめている。 3.府内の居住地校で学ぶ視覚障害児童生徒  令和4年度         ( )内は当センター相談生  幼 児            7名(4)  小学校  視覚支援学級   11名(5)    通常学級     20名(3)(通級指導利用11)          特別支援学級    5名(5)  中学校  視覚支援学級    4名(2)       通常学級      8名(3)  高等学校           7名(7)  *視覚支援センター、スーパーサポートセンター、育(はぐくみ)支援センターによる把握数 4.居住地校で学ぶ視覚障害児童生徒(全国) インクルーシブ教育システムの流れを受け、居住地の学校で学ぶことを希望する幼児児童生徒の数は年々増加している。見え方的には、盲学校や視覚支援学校適の子ども達の約6割が地域で学んでいる現状がある。 5.視覚支援センターの活動  (1)相談支援 ・必要に応じて医療機関、地域の保健センター、療育機関、教育機関等と連携する。 ・学齢期以降は学校(担任)支援を中心に支援をすすめ、必要に応じて、保護者との相談、児童生徒への直接支援を行う。 ・地域支援コーディネーターと校内巡回相談員が巡回や来校にて相談を行う。   〇乳幼児の支援   【保護者支援】    ・日常生活における配慮や手立て    ・就学に関する相談、情報提供   【子どもへの支援】    ・視機能評価    ・遊びを通した保有視覚活用    ・歩行指導、手指操作    ・視知覚向上のための指導(視覚補助具操作など)   〇児童生徒の支援    *視覚に障害のある子どもの学習や日常生活全般について、相談・支援を行う   【担任等への支援】    ・個別の指導計画作成に関する支援    ・教科等の指導や日常生活に関する支援    ・拡大教科書やPDF版拡大図書(UDブラウザ)申請にかかわるサポート    ・合理的配慮の提案    ・障害理解教育等に関する情報提供・支援    ・進路相談(各種情報提供、授業公開等)   【児童生徒への直接支援】    ・視覚補助具の指導    ・適性文字ポイント選定(弱視)    ・点字、歩行指導    ・教科学習につながる指導 (作図・辞書や地図などの活用法)           (2)研修支援等   〇研修講座    視覚障害研修講座の開催     教育関係者、医療・福祉関係者を対象に、ニーズに応じた内容で実施。   〇講師派遣    地域の学校の職員研修会の実施。総合的な学習の時間や人権学習などの理解教育に当事者教員を講師をとして派遣。  (3)啓発活動 視覚に障害のある幼児児童生徒の育ちや学びを支援し、当事者、その保護者がつながる場を提供。     サタデースクール(学校公開事業)     学校説明会     あおぞら教室(乳幼児親子教室)     京都府視覚相談会への参加   6.他機関との連携による支援  事例1 就学に向けたあいあい教室との連携ケース    乳児期からあいあい教室の療育を利用。    年長:あいあい教室と連携して点字指導を開始。      ➡点字学習資料提供(当センター)       個別指導(あいあい教室)       点字導入のためのレディネス指導(当センター)        ・概念に関する指導        ・手指に関する指導        ・言語に関する指導       歩行指導(当センター)       小学校の環境調整(両機関)    入学後:巡回相談により在籍校での学びを支援(当センター)        来校相談での歩行訓練士による指導、教育施設を利用した教科学習の補充        放課後デイ提供と保護者支援(あいあい教室)        ➡両機関での継続した情報共有に基づく支援提案  事例2 見え方の変化に伴う通級指導教室との連携    小学校入学時より通級指導教室利用    小6 病気の進行に伴い登下校の安全対策が必要となる       ➡中学校進学を見据え、通級指導教室担当者より当センターに歩行指導の依頼        盲学校の歩行訓練士が在籍校に出向き、白杖を使用した歩行指導を定期的に開始。(登下校ルート)    中1 更なる視力低下のため、本校高等部入学の可能性も鑑み、当センターに教育相談の依頼        ・視機能評価        ・有効と考えられる視覚補助具の提案        ・定期考査等での合理的配慮の提案        ・職員研修の実施       ➡サタデースクールに参加し、盲学校での学びを体験。在校生との交流や視覚障害者スポーツを体験を通して自分の見え方に向き合い、卒業後の進路を検討。 7.まとめ  ・顔の見える連携を ~ロービジョンネットワークの活用~  ・つながる機会を増やす  ・相手機関に対する理解と敬意を  ・相談対応の質を高める  ・子どもと保護者に寄り添う支援を  <P34~37> パワーポイント資料 <P38~42> 話題提供② 「視覚障がい関係の専門機関との連携と今後の課題」 京都市立北総合支援学校 支援部 弱視通級指導教室担当 冠 雄祐 1.弱視通級指導教室「アイリス教室」の概要 〇弱視通級指導教室(通称:「アイリス教室」)設置について 弱視通級指導教室(以下、アイリス教室)は、国において平成5年度から「通級による指導」が制度化されたことを受け、京都市では弱視児童の自立活動の充実を図るために、通級制による「弱視通級教室」が平成5年4月より設置された 〇対象児童 アイリス教室への入級対象児童は、普通学級での教育課程による教科学習が可能な児童で、両眼の矯正視力が0.04以上0.3未満または何らかの視機能障害(視野狭窄など)はあるが、将来、点字による教育が必要でない児童 〇実施方法 地域制総合支援学校※ 教員が、児童が在籍している小学校に出向き、指導する「巡回指導方式」をとる ※「京都市立総合支援学校」…「特別支援学校」 〇指導形態 ①障害の状態の改善、克服を目的とする「自立活動」の指導 ②障害の状態に応じて、各教科の内容を取り扱いながら行う特別な指導 →アイリス教室の指導形態は、この2つに限られている。各教科の授業については、在籍学級の一斉指導において、弱視のある児童の障害の状態により理解しにくい内容、例えば地図の読取りや運動など視覚の弱さで履修しにくいものの先行学習のみとされている。よって在籍学級の学習の遅れや、通院のための学習空白の補充などの学習指導はしない。またアイリス教室の指導は、小学校の間で修了し、中学校は、総合支援学校の総合育成支援教育相談センター 通称:【育(はぐくみ)】で対応する 〇指導目標 ・対象児童一人一人の能力・特性に応じて、視知覚機能や補助具の活用に関する練習を行うことで、一人一人の児童の発達の可能性を最大限に伸ばす ・個別の指導やスクーリングを通して、障害に対する自己理解と前向きな姿勢を培い、自らの生活を切り開いていく意欲と態度を育てる ・学級担任と話し合いながらアイリス対象児童が普通学級の中で適切な教育的配慮を得られるようにする 〇指導時間 週当たり、1~6単位時間程度。授業時間帯や放課後に、原則としてマンツーマンでの指導 〇指導内容 ★視知覚の学習 ・基礎学習…熟視・観察、視覚認知、視覚と手指の協応動作に取り組む ・応用練習…文字や図形を正確に描く、表やグラフの見方を知り慣れる ★補助具の利用に関する学習 ・ルーペや単眼鏡、タブレット型端末の便利さを知り、使い方に慣れる ・それらの補助具を使って、教科書や地図帳、黒板等に書かれたものを読み取る 2.指導の実際 〇在籍児童 令和4年度は、児童数11名(巡回校10校)、指導者5名でスタート 〇指導の実際 … アイリス教室での指導例 ★スクーリング アイリス教室の在籍校は全市に点在しているので、年に数回スクーリングを行い、アイリス児童の交流を行っている。自分以外にもアイリス教室で学んでいる友達がいることを知り、活動を通して交流を深めている。スクーリングを行う意義、また活動を通じてねらっていることとして、以下に例を掲載する 時期:第1回スクーリング「はじめの会」 <実施時期>在籍校の入学式の日 活動内容 ★自己紹介 ★担当者の紹介 ★学びをサポートしてくれている先生たちの紹介(管理職など) ★視覚的活動 →新入級児童などの視覚的アセスメントをとるという側面もあり ねらい ・アイリス教室児童および担当者を紹介する ・アイリス教室児童および保護者の交流を深める ・新入児童を紹介する ・ゲーム等を通して児童の交流を深める ------------ 時期:第2回スクーリング <実施時期>7月4週目~ 活動内容 ★サマースクールに向けた準備 ★1学期の学習まとめ報告 など ねらい ・グループ活動を通して児童の交流を深める ・サマースクールに向けて、グループ活動を通して交流をはかり、仲間意識を育てる ------------ 時期:第3回スクーリング「サマースクール」 <実施時期>8月1週目~ 活動内容 ★校外活動 ねらい ・グループ活動を通して交流を図り、仲間意識を育てる ・アイリス教室児童の交流をはかり、自分の見え方を理解し、集団の中で状況に応じた行動ができるようにする ・様々な活動を通して、視経験を増やす ・家庭から離れ、普段と違った環境の中で協力して活動をすることにより自立心を育てる ------------ 時期:第4回スクーリング「ウインタースクール」 <実施時期>12月4週目~ 活動内容 ★校外活動 ねらい ・アイリス教室児童の交流をはかり、自分の見え方を理解し、集団の中で状況に応じた行動ができるようにする ・様々な活動を通し、視経験を増やす ・家庭から離れ、普段と違った環境の中で、協力して活動をすることにより自立心を育てる ------------ 時期:第5回スクーリング「まとめの会」「卒級生をおくる会」 活動内容 ★1年の学習のまとめ 報告会 ★卒級生をおくる会 ねらい ・1年間及び6年間の学習を振り返り、次の学校生活へ向けての気持ちを高める ・アイリス教室児童とのグループ活動の中で協力し合うことにより、仲間意識を高める ・アイリス教室での学習を振り返り、次の学校生活へ向けての気持ちを高める ・修了児童は、アイリス教室での学習を振り返り、次の学校生活へ向けての気持ちを高める 3.関係機関との連携 【三者連絡会】 三者(盲学校、あいあい教室、アイリス教室)が、定期的に交流できる機会を設けている。会の目的としては、三機関が、乳幼児から大学、理療科の生徒までそれぞれの成長過程において、必要な連携が取れるように情報交換を行う。また、各教育機関が、どのような取組(学習会や研修、乳幼児・児童・生徒の行事など)をするのかを知り、指導に活かすことを主たるねらいとしている ※詳細は、【資料①「三者連絡会について」】を参照 【京都府立盲学校との連携】 〇UDブラウザ申請・活用方法 PDF版拡大図書は、慶応義塾大学 中野泰志研究室が作成した教科書・教材閲覧アプリ「UDブラウザ」用のデジタル教材。データをダウンロードするにあたっての申請手続きを、現在は京都府立盲学校のご協力を得て行っている。また、UDブラウザの活用方法について、具体的な指導方法を情報提供してもらう 〇「出会いとふれあいのオープンスペース」 アイリス教室の授業を参観 京都市教育委員会総合育成支援課が主催し、「保護者や関係機関の方に、総合支援学校や育成学級、通級指導教室での教育について理解を深めてもらうこと」を目的に市内の数校を会場に開催される。盲学校やあいあい教室(保護者も含む)からも参加を募り、アイリス教室の授業を観てもらう 【京都ライトハウス あいあい教室との連携】 〇「あいあい教室」 就学後のフォロー・引継ぎなど 就学後にあいあい教室の担当者とアイリス教室の指導者間で、児童の様子について引継ぎを行っている必要に応じて、在籍校での授業の様子や、アイリス教室での活動の様子を観に来てもらい、児童の実態をふまえた視覚面での支援方法や、心理面での寄り添い方・サポート方法などの意見交流を行っている 〇研究授業の参観 アイリス教室では毎年各指導者が研究授業を行っている。その際にあいあい教室や盲学校の先生方も来校され、授業参観はもちろん、事後研究会にも参加してもらっている。指導法や児童の見取り方など具体的な意見交流を行い、指導者のスキルアップを含め、非常によい学びの場になっている 【進学先の中学校との連携】 アイリス教室の通級指導は、小学校卒業の段階で修了する。弱視のある児童が中学校の普通学級で引き続き安心して学んでいくために、アイリス教室の指導者と共に次のような取組を行っている ★先輩(卒級生)から学ぶ ・卒級生の先輩にインタビュー/中学校の先生にインタビューして中学校生活をイメージできるようにする ★進学先の中学校との「連携」 ・アイリス児童が「自分の見え方」について中学校教員、周りの友達などに伝えられるよう事前に準備する ・中学校の教職員に向けた研修 ~シミュレーションゴーグル~(アイリス指導者→進学先の中学校) 4.今後の課題 〇指導力・専門性の継承 人事異動による担当教職員の交代、弱視教育担当者の継続指導年数の担保、引継システムの確立 〇医療機関(眼科医、視機能訓練士など)との連携 教員が指導上、児童の眼疾や見え方など尋ねたい際に医療機関と連携する機会が少ない 現状、オプトメトリストの配置が総合支援学校1校にとどまっており、知識共有に関して改善余地あり <P43> 【資料①「三者連絡会について」】 三者連絡会について ◆目的 ・三者(盲学校、あいあい教室、アイリス教室)が、乳幼児から大学、理療科の生徒までそれぞれの成長過程において、必要な連携が取れるように情報交換を行う。また、各教育機関が、どのような取組(学習会や研修、児童・生徒の行事など)をするのか知り、指導者もそれを踏まえて指導に活かすことができるようにする ◆参加機関 ・京都府立盲学校、京都ライトハウス あいあい教室、弱視通級指導教室(アイリス教室) ◆年間の予定 6月頃:第1回連絡会 → 顔合せ、年間の予定確認、研修会テーマ決め 10月頃:第2回連絡会 → 合同研修会にむけて  11月頃:第3回連絡会 → 合同研修会 2月頃:第4回連絡会 → 年間の反省、次年度担当 確認 ※毎回、基本的に各機関の現状報告。内容としては、幼児・児童生徒の様子や行事などの取組、研修(研究発表会)などの案内 ◆合同研修会 例年、10月頃に「合同研修会」を実施している。実践報告(1発表につき30分×3)と各機関との意見交流(指導、助言など) 【過年度 研修テーマ】 H28年度:「手指の操作、巧緻性を高める取組について」 H29年度:「視覚補助具(iPad、単眼鏡、ルーペ)などの使用について」 H30年度:「形の捉え、概念へのアプローチについて」 R1年度 :「“自分のみえ”について、周りにどのように伝えていくのか」 R3年度 :「見え方のアセスメントと、それに基づく支援の実際~視機能評価と支援~」 <P44> 話題提供③ 「視覚障がい関係の専門機関との連携と今後の課題」 京都ライトハウス 視覚支援 あいあい教室  古川 千鶴 (1)あいあい教室の紹介 ・0歳~就学前・・・児童発達支援:親子通園(居宅訪問・保育所等訪問/京都府内の訪問療育) ・対象:視覚に障がいのある、または不安のある子ども ・地域:京都府内、あるいは近隣の他府県から通園 ・通園プログラム(児童発達支援)/行事 🐤乳幼児期の支援  ・子どもへのていねいな療育  ・家族への支援(母・父・きょうだい)  ・地域生活の支援(保育園・幼稚園・通園施設など) 🐤啓発の大切さ→支援者の連携→子どもを守る (2)あいあい教室から学校への引継ぎ事例 (3)支援者の連携 【三者連絡会の歩み】 ・1983年 地域小学校に通う弱視児のための「夏季弱視訓練(サマースクール)」開始 ・弱視通級指導教室「アイリス教室」の巡回指導 開始 ・1995年 京都視覚障がいフォーラム 開催  京都府立盲学校/アイリス教室/あいあい教室  職員有志で研修・交流 「三者連絡会」として、現在も継続 ・年3回の連絡会   情報の共有(各機関の状況報告・必要なケースの話など) ・研修会の実施 ・職員同士の交流会(夜の部)   (4)まとめ 🐤普段からの連携がベースにあることで・・・次のステージへの移行がスムーズ ・職員同士の、入学前後の情報共有がしやすい ・保護者に情報提供がしやすい →不安いっぱいな「就学」を、親子とも少しでも安心して迎えられることにつながる <P45~46> 口頭発表① 『おしゃべり知』におけるSNSの活用〜保護者・療育者間のノウハウの共有を目指して〜 大阪工業大学 高橋 基就 赤井 愛 1.背景と目的  各家庭や療育施設では生活動作の習得に向けて各児に応じた取り組みがなされており、そこには様々な工夫や解決法(以下ノウハウ)が蓄積されている。しかし、そこには普段意識していないノウハウもあり、共有しやすい形で体系的に整理されていないものも多い。そこで、本研究では「保護者・療育者の多様なノウハウの抽出」と「抽出されたノウハウのデータベース化」によって視覚障がい乳幼児・保護者・療育者の支援となるシステムの創出を目指す。本報ではノウハウの抽出について述べる。活発な会話によって抽出されたノウハウを『おしゃべり知』と位置付け、「対話型ワークショップによるノウハウ抽出」と「SNSによるノウハウ抽出」の2つの手法による『おしゃべり知』の抽出を試みる。 2.対話型ワークショップによるノウハウ抽出  ノウハウの抽出と可視化の手法として、オンラインでの対話型ワークショップ開発を行った。第1回実験は保護者4名に、第2回実験は療育者3名に、第3回は療育者・研究者4名に対して実施した。プログラムは約90分、事前説明及び自己紹介・おしゃべり・振り返りの3部構成である。身近な話題をカード化した『きっかけカード』により話題の提示し、対話の内容を、図や文字などを用いてリアルタイムに可視化する手法として『落書きグラフィック』を活用した。 3.SNSによるノウハウ抽出 3-1.SNS活用の背景  対話型ワークショップは限られた時間内でノウハウ抽出を行う手法として有用である。しかし、各自の生活リズムや居住地の関係から同じ時間・同じ場所に集まることが困難な場合も多い。そこで、時間と場所を問わずコミュニケーションをとることができる手法として、SNSを活用したノウハウの抽出を試みる。本研究では①参加者が実験に参加する際のハードルが比較的低いこと ②個人情報の保護が容易であること の2点からLINEアプリケーション内のトーク機能である『LINEオープンチャット』を活用する。 3-2.ファシリテータの関わり方と参加者の発話の関係  ノウハウ抽出において、「参加者間の会話が活発であること」と「会話が継続的なものであること」が重要であると考える。しかし、参加者が互いを知らない状態では、自然に活発な会話が発生するとは考えにくい。よって、ファシリテータが参加者の発話を促すことが必要になると考える。そこで、参加者に対するファシリテータの関わり方によって会話の広がりやノウハウ抽出にどのような差異が現れるかを明らかにするため、予備実験を行なった。その結果、①参加者の発話を促すには「話題の提示」と「相槌・深掘り」の両方を組み合わせることが重要である、②ノウハウの抽出には「話題の提示」を行うことが重要である、③「相槌・深掘り」を行った場合、より具体的なノウハウ抽出につながるケースも見られる、ということがわかった。一方で発話量も減少傾向であり、参加者間の対話も見られなかったことが課題となった。 3-3.「コミュニケーションの場」としてのLINEオープンチャット  本オープンチャットには10月25日時点で21名(保護者14名、療育者3名、その他5名)が参加中であり、東京・千葉・宮城・京都など様々な場所から参加いただいている。予備実験の結果をもとに、情報の共有や既存のノウハウを共有するなど話題の提示を行っている。また、参加者の方同士の会話を促すため、アイスブレイク(自己紹介や好きな食べ物などの話題の提示など)を試みている。これらの工夫と参加者の増加にともない、徐々に発話量が増え始めている。また少しずつではあるが、居住地に関わらず同じ悩みについて会話をしたり発言に共感したりなど、参加者間のコミュニケーションも生まれ始めている。本研究では、ノウハウの抽出に関わらず、保護者の方々がオープンチャット内で同年代のお子さんの育児をしている方や、似た悩みを抱えている方に出会い、相談や質問も含めた気軽なコミュニケーションが可能な場になればと考えている。 3-4.今後の課題  現状、オープンチャットへの参加は各施設の療育者・支援者の方からの紹介が基本となっており、参加いただいているのは地域等のコミュニティにすでに属している方々である。しかし、SNSのメリットとして、地理的制約などにより支援につながりにくい方々も参加が容易である点が挙げられる。よって今後の大きな課題として、そういった方々にも届くよう広く周知をしていくことが重要であると考える。また、成人の当事者の方にも参加をいただくことにより、様々な視点から会話・相談・情報共有なできるようにしていくことも重要な課題である。 <P47~50> 口頭発表② 「京都ロービジョンネットワークの多職種連携」  いなば眼科クリニック 稲葉 純子 ※パワーポイント資料 <P51> 第44回 視覚障がい乳幼児研究大会(京都大会) 参加者アンケートへのご協力のお願い 今後の研究大会開催の参考にさせていただくため、大会についてのアンケートへのご協力をお願いします。 以下のQRコードまたは、URLからご回答下さい。質問は問1から問12まであります。 11月30日(水)までにご入力いただけますよう、ご協力のほどどうぞよろしくお願い申し上げます。 https://forms.gle/NoJqXV13XCMks5me7 ※QRコード <P52 奥付> 好評発売中! 『ロービジョン体験キット』 視野狭窄や白濁体験などが出来る紙製メガネ。 視覚障がい児に関わる方、啓発講座や小中学校の総合学習などにお薦めです! ● 価 格 : 1セット(10部) 2,300円 ● お問合せ:  視覚障がい乳幼児研究会事務局(Fax:075-462-4464)まで ------------ 『視覚障がい児の保育を進めるために』改訂版 ● 価 格 : 1冊 100円 ------------ 新刊発売! 『あゆみ』 ~見えない・見えにくい子どもたちを育てる方へのメッセージ~ (視覚障がい乳幼児研究会 監修/二瓶社 発行) 視覚障がい児を育てる9名の保護者の方の体験談集です ● 価 格 : 1冊1,400円 ● お問合せ: 視覚障がい乳幼児研究会事務局(Fax:075-462-4464)まで ------------ 発行 視覚障がい乳幼児研究会 会長 山本 利和 【事務局】 京都ライトハウス あいあい教室内 視覚障がい乳幼児研究会  事務局 〒603-8302 京都市北区紫野花ノ坊町11 TEL (075)462-4462 FAX (075)462-4464 E-mail info@abbc88.org