<P1> 第42回 視覚障がい乳幼児研究大会 大阪大会 【大会プログラム】 11月15日(日) 10:00~10:10  開会式                                      10:10~12:00  講演  青木 隆一(千葉県教育庁) 「視覚障害教育を取り巻く状況と課題、そして将来への期待」  13:00~14:30  実践報告 「大阪府の視覚支援学校における幼稚部の実践と相談支援」 ・福島 律子      (大阪府立大阪北視覚支援学校) ・小北 千晶・村江 鉄平(大阪府立大阪南視覚支援学校) 14:45~15:45  口頭発表 【大阪を拠点に活動する視覚障がい児を支援するグループの活動紹介】 ・中林 智子・津田 美穂子(地域の学校で学ぶ視覚障害児(者)の点字教科書等の保障を求める会) ・田中 加津代(NPO法人 弱視の子どもたちに絵本を) 【視覚障がい当事者の方の体験談】 ・谷口 真大 (ダイアログ・イン・ザ・ダーク)  16:00~16:30  岡田 弥さんを偲ぶ会               16:30~16:45  閉会式 17:00~17:30  総会 <P2> 講演 『視覚障害教育を取り巻く状況と課題、そして将来への期待』 青木 隆一(千葉県教育庁教育振興部特別支援教育課長)  (前文部科学省初等中等教育局視学官(併)特別支援教育調査官) ※本資料では、視覚障害特別支援学校を盲学校とする はじめに 1 特別支援教育の現状と視覚障害教育の学びの場の現状 (1)我が国の特別支援教育の現状 (2)盲学校の現状 (3)小・中学校の弱視特別支援学級の現状 (4)小・中・高等学校の通級による指導の現状 (5)現状から見えてくる課題とその対策 2 新学習指導要領 (1)特別支援学校幼稚部教育要領から (2)幼稚園教育要領から 3 関連情報 (1)新しい時代の特別支援教育の在り方に関する有識者会議(文部科学省) (2)視覚障害教育のあり方に関する実態調査(社会福祉法人日本視覚障害者団体連合) (3)難聴児の早期支援に向けた保健・医療・福祉・教育の連携プロジェクト   4 視覚障がい乳幼児研究会に期待すること <P3~P4> 実践報告1 ~大阪府の視覚支援学校における幼稚部の実践と相談支援~ 『大阪府立北視覚支援学校 こぐま教室・幼稚部について』   福島 律子(大阪府立大阪北視覚支援学校) 本校は、大阪市東淀川区にある乳幼児から成人の方までを対象とした視覚支援学校です。幼小学部、中学部、高等部があり、高等部には普通科と理療科があります。 ○こぐま教室 毎週木曜日…午後2時~3時30分(ただし、長期休業中は開室いたしません) 対象…0歳から5歳の視覚障がいのある乳幼児とその保護者 ~子どもたちの笑顔いっぱい広げましょう~ * 身近な人と関わって楽しく遊ぼう * 音楽リズム、リトミックを通じて、身体を動かす楽しさを味わおう * 固定遊具や視覚障がい児のために工夫された道具を使って遊びを広げよう * それぞれの見えの違いに応じた「視知覚遊び」も体験しよう 【保護者支援】 * 視覚障がい児理解のための基礎知識を学びましょう。 * 子育ての悩みを共有しましょう。 * 子どもたちへのかかわり方を一緒に考えましょう。 ○幼稚部保育目標 ・人と共感できる力を大切にする ・生活を支える体力と体を動かす大切さを伝え、移動の力をつける ・排泄・着脱・食事などの自立に向け、生活の主体者としての力をつける ・『体験とことば』をしっかりつなげながら自分の思いを言葉で伝えることができる力をつける ・経験を大切に、何にでもさわれ、物とかかわれる手指を育てる ・(弱視児には)視覚的興味を引き出し、認知力をつける ・『やったね!』という自己充実感を大切にする ○毎日の時間割 ○音楽リズム(時間割内の9:50〜10:30の保育の時間) ・遊び歌に合わせて動くことでボディイメージや「ことば」へのイメージを豊かにする ・繰り返しの中で自発動作を引き出す ・全身の触感覚を高める ・全身のリラクゼーションをはかる ・イメージを膨らませ心豊かに周りの人とかかわる ○製作  ・生活の中でイメージを豊かにし、様々な表現を楽しむ ○感触遊び  ・身体ごと楽しみながら、いろんな素材にさわれる、それを変化させられる手指になる 〇お話あそび ・身体を動かし体験しながら、お友だちや先生と共感しあい、お話の世界を楽しむ ○リトミック(時間割内の10:50〜11:30の保育の時間) ・ボディイメージや体のバランス、協応的な動きを経験し、身体表現の楽しさを感じる ※動物体操 ※ルールのある遊び…例おおかみさんいまなんじ、あぶくたった、しっぽとり、リレー、綱引きなど ※鉄棒やボールなど遊具や用具を使った活動 <P5~6>パワーポイント資料 <P7~9> 実践報告2 『幼稚部の保育と早期相談支援』 小北 千晶(大阪府立大阪南視覚支援学校 幼稚部) 村江 鉄平(大阪府立大阪南視覚支援学校 教育支援室) 1.本校幼稚部について (1)教育目標 「生きる力」の芽生えを養う ・健康な心や体を育てる ・人とかかわる力を育てる ・豊かな体験をさせる ・言葉で表現する力を育てる ・豊かな感性や表現力を育てる (2)在籍数 3歳児(ひよこ組) 1名 4歳児(うさぎ組) 2名 5歳児(とら組)  3名  計6名 ・教員数  5名(主任含む) 非常勤8H (3)令和2年度 日課表  ※表あり 2.外部の方への支援 (1)幼稚部が行う相談支援 対象:視覚に障がいのある、0歳~就学前のある乳幼児とその保護者 ・教育相談(随時) ・交流保育(月に1回程度)在籍児との交流 5/19(火) リズムあそびをしよう① 6/10(水) すなあそびをしよう 7/7(火) たなばたまつりに参加しよう 9/16(水) リズムあそびをしよう② 10/9(金) 体育あそびをしよう① 11/25(水) 造形あそびをしよう① 12/16(水) 感覚あそびをしよう 1/27(水) お正月あそびをしよう 2/17(水) 体育あそびをしよう② 3/10(水) 造形あそびをしよう② ・親子教室(月に1回程度)放課後に実施 6/30(火) からだをうごかそう①  9/29(火) 身近な素材であそぼう① 10/20(火) からだをうごかそう② 11/17(火) 身近な素材であそぼう② 12/8(火) 感覚あそびをしよう 1/19(火) お正月あそびをしよう 2/10(水) さわる絵本を体験しよう <広報活動> 市町村教育委員会 保育課 保健センター 保健所 子ども家庭センター 病院 療育園 など 教育相談パンフレットの送付・訪問 <他機関との連携> 大阪府視覚障害者福祉協会 希望教室 京都ライトハウス あいあい教室 など (2)教育支援室が行う相談支援 対象:視覚に障がいのある、幼稚園・保育所、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校に在籍している子ども達とその保護者、またその当該学校の教職員 ・学校での教育相談(随時) ・訪問教育相談(応相談)   … 定期的に園や学校へ訪問して行う (3)教育支援室・幼稚部の連携 事例A)3・4歳児に幼稚部に在籍し、4歳児のときに居住地園交流を定期的に行った。 5歳児に転校し、教育支援室から園や進学先小学校に訪問教育相談を行っている。 同時に、本人・保護者は幼稚部の交流保育に参加している。 事例B)地域こども園に在籍し、教育支援室から訪問教育相談を行っていた。 幼稚部の交流保育に参加し、進路について本校小学部への入学を検討中。 <P10~12>パワーポイント資料 <P13~16> 口頭発表1 『「地域の学校で学ぶ視覚障害児(者)の点字教科書の保障を求める会」活動紹介』 中林 智子 (地域の学校で学ぶ視覚障害児(者)の点字教科書等の保障を求める会 代表) 津田 美穂子(地域の学校で学ぶ視覚障害児(者)の点字教科書等の保障を求める会 役員)   1.本会の概要 ・1986年に大阪で発足。会員は、視覚障害のある子どもを地域の學校で学ばせたいと願う親御さんを中心に、視覚障害当事者や学校の先生等で構成。当初の主な目的は、地域の學校で学ぶ視覚障害児に点字の教科書を保証すること。 ・2004年に小・中学校の点字教科書の無償給付が実現した後は、教材の保障に留まらず、視覚障害児の学校生活をより豊かなものにするために必要なこと(学校に理解を求めるための話し方や先生・友達との接し方、親子関係等)について例会で情報・意見交換を行うなど活動の幅を広げています。 2.地域の学校への入学を阻む壁  盲学校か地域の学校かを選択するのは親御さんやご本人です。ただ、現在でもなお、地域の学校を望んでも、次のような《壁》があります。 ・視覚障害児の受け入れ経験がないことを理由に、消極的な態度を見せる学校・教育委員会の姿勢がみられる。地域格差あり。 ・必要な支援を求めた場合、「それなら盲学校へ行ってください」と言われることがある。(「合理的配慮」への無理解) 3.取り組みに対する思い ・「特別扱いでなく、必要な支援を!」…視覚障害児がクラスの一員として自然に過ごせるクラスづくりを願っています。 ・エンパワメント…親御さん同士、視覚障害児(者)同士の縦のつながりをつくりエンパワメントし合える環境をつくりたいと考えています。(「NPO法人弱視の子どもたちに絵本を」さんのご協力大) ・経験の共有…先達の経験を活かし、地域の学校で学びたいと願う視覚障害児と親御さんの願いが叶うようサポートしていきたいと思います。 4.保護者の思い(津田 美穂子) ☆求める会に出会うまで☆  我が家には生まれつき全盲の息子がいます。三人兄弟の末っ子で、兄たちとは10歳・8歳の年の差がある為、我が家にとっては久しぶりの赤ちゃん。家族全員が待ちに待ったベビーでした。その三男に目の障害があるとわかったのは、3か月検診の頃…。 始めの頃は発達の問題を考え脳波などの検査をしましたが、異常なし。特に原因が見当たらない事。目の中心が少し白く見える事などから、小児の眼科を受診し、生まれつきの全盲と診断を受けました。当時の私は、目が見えない世界を想像する事も出来ず、健康に産んであげる事が出来なかった自分を責める気持ちでいっぱいで、なにも考えられませんでした。 この時の私は、全盲の息子と新しい環境へ飛び込む時に必ず言われる「前例が無いので受け入れは出来ません。」「知識がないので無理だと思います。」とお断りの常套文句を言う窓口にいる担当の方と同じだったと思います。急に知らない事だらけに包まれた息子を抱きしめながら散々泣いた後、私は気づきました。息子は何一つ変わっていない。変わったのは私。私が視覚障害の赤ちゃんと言う色眼鏡で見ているだけ。まずは色眼鏡を外して見てみようと思い見つめなおすと。そこにはただただみんなに愛されてにこにこ幸せそうな、昨日までと何も変わらない可愛い三男がいました。 そこでようやく気がつきました 当たり前の事に。 幸せかどうかは、この子自身が決める事で周りにいる私たちが決める事じゃない。 体が健康でも不幸だと思ってしまう人もいるはず。 逆に何があっても幸せを感じて過ごせる人もいる。 私はこの子が幸せな人生を過ごせるように。出来無いことを嘆くより、出来ることを喜んで、一緒に楽しんでいけばいいのだと。今までしてきた子育てと何も変わらないのだと思い心が軽くなりました。ただ、生きて行く上できっと工夫は必要なはずと思い、それからは、視覚障害の子供の支援をしてくださる教室などを調べ、校区にあたる大阪北視覚支援学校の未就園児の教室や、大阪の天王寺にある乳幼児から通える視覚障害の子供が通う教室にお世話になり、様々な事を学びながら、楽しく子育てをし始めました。息子もすくすくと我が家のアイドルとして成長し、兄弟仲良く暮らしていました。そして1歳が過ぎ、赤ちゃん期から次のステップ、幼稚園、そしてその後の小学校を考えるようになった頃、先輩お母さんから「求める会」の存在を教えてもらい、2歳になる頃に求める会に参加させて頂きました。 ☆求める会に出会って☆  初めて参加した求める会は、沢山の当事者の社会人の方、学生の方、保護者の方と、ご兄弟や、視覚障害の子供たちに関わってこられたボランティアの方。多種多様な立場の方たちが参加されていました。私自身、小学校の頃から、障害のある子も当たり前のように共に机を並べ学んでいたので、障害に対してあまり構えることなく捉えていると思っていましたが、息子を育てるにあたって、視覚障害があるからこう育てなくてはとまだ意気込んで、構えていたのだなという事に、当時の求める会の、こんな話題から気づかされました。話題は、視覚障害の中学生の息子さんを育てるお母様の相談でした。内容は、「将来の事を考えて料理を教えたいけれど、なかなかやりたがらなくて…」と言う事。私も、「本当だ、将来自立するためには料理くらい出来なくては」食い入るようにお話を聞いていました。そこで、私より少し若い男性の当事者Aさんが「料理好きならいいけど、思春期の中学生男子がお料理そんなに好き好んでしないでしょ」とさらっとおっしゃいました。確かに…その頃中学1年生の我が家の長男を思い浮かべ、中学生男子の長男は、部活やお友達と遊ぶ事に夢中で、「あなたの将来の為にもお料理しなさい」とい言ってもしないだろうし、私もあえて言わないなと…思いました。もちろん興味を持ってくれたら素晴らしいし、ラッキー。だけど、年頃的に興味なくて当然なのに、「視覚障害があるから、将来の為には必要だ!!自立のためにも大切!!」と思い込んでいた自分に気づきました。その後に続けてAさんが「僕なんて、お味噌汁作りに挑戦していたら、母に、ドンくさいなぁもぉ、料理向いてないんちゃう?私するわ」と味噌漉しを取り上げられました」と笑いながらおっしゃっていました。さらにAさんのお母様の名言を聞いてみたところ「いい加減は、良い加減かな…。僕の母は本当にいい意味で適当なのです(笑)」と教えてくれました。その時から、Aさんのお味噌汁エピソードと、Aさんのお母様の、明るくリラックスしているけれど、絶妙な名言は、私の三兄弟を育てる子育てのバイブルになっています。そしてこの言葉を聞いてやっと本当の意味で、三男の障害ではなく、三男自身と向き合えた気がします。その後も【自分自身の障害にいつ気が付きましたか?】【その時の家族の反応や、対応は?】【その時どう感じた?】【ご兄弟の関係】等。他ではなかなか聞けない生きた先輩たちの経験談を聞くことが出来、もちろん大変な現実も乗り越えなくてはいけない事もあるけれど、そんなに構えず肩肘はらず、三男自身と向き合って育てていけばいいのだと思えて、さらに未来が明るく感じられた初めての会合でした。 ☆求める会の存在とは☆  私の子供が何かを始める時、どこに行っても直面する「前例がないから」と言われる「前例」が、求める会には沢山あります。私一人の知恵や考えだけでは乗り越えられない事も、求める会で、上下や横のつながりを持つことで正しい知識を知り、助けて頂き、乗り越えられた事が多々あり、これからもきっと沢山あると思いますし、あらゆる不安や、疑問に、いつも沢山の会員さんが寄り添い、共に考え、進む方向を指し示してくださいます。  情報が少ない事や、間違えた認識が差別や区別を産み、ハンディキャップを持つ人たちが生活しにくくなる。そんな生きにくさを解消する第一歩は、正しく知ってもらう事なので、これからはもっと、様々な場所で異世代が集まって知識や経験をシェアし。同じ気持ちで協力し合って歩んでいける、意見を交換できる求める会のような場が必要だと感じています。 上下や横のつながりが薄くなり、なんでもリモートで済む時代ですが、そこを逆手にとって、これからは、日本全国、世界と広くつながり、全く違う事情を持っている方たちとも垣根無く関わり、少しでも正しく知識や事実が伝わり、どんな状況の人も等しく、心地よく過ごせる世の中になっていって欲しいと願っています。 5.本会の連絡先  地域の学校での学びにご関心をお持ちの方は下記までお気軽にご相談ください。  本会連絡先:Info@motomeru.sakura.ne.jp <P17~18> 口頭発表2 『見えない見えにくい子どもたちに絵本の楽しさを』 田中 加津代(NPO法人弱視の子どもたちに絵本を 事務局) 1981年から、点訳、音訳の本を届ける活動をしていた「視覚障害児のためのわんぱく文庫」のメンバーが、「弱視の子どもに絵本を」の願いを実現しようと、当NPOを立ち上げた。2010年、弱視の子どもにスポットをあてながらも、どの子にも「読める」本、「読みやすい」本を、自由に選んで、読める環境作りを趣旨として出発した。じぶんの字・じぶんの言葉・じぶんの本をもつことは、自分で考え、自分を表現し、自分の望みを生き、人の望みもわかることだと、と考えているからだ。  発足から10年。全盲、弱視の子どもへ資料の提供と、さまざまな体験プログラム、大人向けの学習講座などの行事もあちこちとひろがり、何している団体?と言われることも多い。子どもたちの成長に役立つことなら、何でもやろうが、常々の合言葉である。 1.読書について(資料と機器) 資料は、多媒体の本(いろいろの形の本)―さわる絵本、点字付き絵本、リライト、拡大文字本、点字図書、DISY、マルチメデイアDASYを用意するのが基本。これは、石井みどり先生から学んだ。読むために必要な機器は、拡大読書器、パソコン、タブレット、録音再生機器、ピンディスプレイ、ソフトとアプリなど。各人に合ったスタイルの読み方と資料が必須。子ども自身が、読むこと自体に苦労をしないスタイルを見つける方法と、たくさんの資料を提供できるようになることを、模索している。 資料の点字の本、拡大本、さわる絵本、マルチメデイアデイジーに関しては、地域の公立図書館、点字図書館、ライトハウス、サピエ図書館や、素晴らしい活動の先輩団体ー札幌・ふきのとう文庫/拡大本、神奈川県・ユニリーフ/点字絵本、吹田市・大阪YWCA点字子ども図書室/点訳本、伊藤忠記念財団わいわい文庫/マルチメデイアDISYの利用を紹介している。 小さな私たちは、個人のリクエストに応じて、少しずつ、多媒体の資料製作をしている。さわる絵本の製作講座や拡大図書製作講座の開催後、2市で、製作ボランテイアグループが誕生。さわる絵本や教材(小さい人向けさわるパズル・カード、立体地図模型、立体模型など)、拡大図書、図鑑の音声デイジー、点訳本や立体コピー地図などを製作している。機器は、i-pad、プレクストークの貸出と使い方の講習。読書や学習のために、ICT講座を継続的に開催。講師は、当事者である先輩で、その子どもに沿ったアドバイスももらっている。 2.体験活動と学習講座 本の貸出しで、知り合った先生から、盲児のために料理教室を催してほしいという依頼があった。それを契機に、ここ8年は、毎月1回、体験活動の集会を開催している。音楽、落語、天文学講座、理科実験は、音や触ってわかる工夫を、講師が熱心にして下さる。パラスポーツ、料理、ゲームの講師は、見えない見えにくい先輩たち。先輩との出会いは大きなテーマ。将来はどんな仕事ができるの?と尋ねら答えに困ったという親御さんの言葉から、先輩に出会う機会をどんどんと作る。仕事の話を講演してもらう大先輩だけでなく、若い大学生や社会人の先輩は、子どもと直につながり、相談役を担ってもらっている。夏のキャンプも欠かせない。いろいろなつながりが生まれている。取り組み始めた弱視のICT活用講座も、今年の3月は、コロナで中止をしてしまった。今は、zoomの集まりで、ワークショプをひらいている。 3.これからの活動 今後も、1,2の活動を、着実に進めていきながら、子どもの自立を見守りたい、それと同時に、視覚障がいがあっても、生きやすい社会になるような働きかけを、しなければならないと考える。 NPOの運営は、社会貢献団体からの寄付や、助成金で賄っている。資金の支援だけでなく、広報の支援を申し出てもらう事も多くなった。今後、私たちのNPO自身が、見えない見えにく子ども、若者への理解をひろがるよう広報を、積極的に取り組みたい。想像の視覚障害から、生な姿を知れば、共感が生まれ、安全で安心で、みんなが、楽に、自由に、生きていける社会への可能性が生まれるはず。私たちの活動が継続しているのは、子どもたちの魅力と共感、そして、社会への責任が、力の源だから。 ※「多媒体の本」画像あり <P19> 口頭発表3 『幼児期における様々な経験の有用性』 谷口 真大(ダイアログ・イン・ザ・ダーク) 2歳の頃に失明した私がたった一つ覚えている見えていた時の記憶。それは、姿見に写った自分と移りこむ後ろの風景です。当時の私には、なぜ自分がもう一人このガラスの向こう側にいるのかが不思議で仕方なかったのを覚えています。 私の人生において、最も影響を与えてくれた人の一人が母親です。私が失明した時、父親は泣きましたが母親は冷静だったと聞きます。どうしたらこの子が一人で生きていけるだろうか。その母親が導き出した一つの答えが、健常者の子供以上にたくさんの経験をさせることでした。今となっては遠い昔のことのように話す母親ですが、当時の気持ちは、私自身大人になった今、ようやく少しだけわかるような気がします。そんな、幼児期に過ごした母親との時間やそこで得た様々な経験、そしてそれが現在にもつながっていることを、お話しさせていただきます。 【プロフィール】 1990年7月生まれ。兵庫県神戸市出身。 網膜芽細胞腫により2歳の頃に失明。以降両目とも視力0の全盲。 神戸市立盲学校幼稚部・小学部を卒業の後、筑波大学附属視覚特別支援学校中学部に進学。同高等部を卒業の後、奈良県立大学・観光学科にてバリアフリーツーリズムを研究。 現在はダイアログ・イン・ザ・ダークに勤務し、接客業をしている。 同時に陸上競技5000mにて、来年実施予定の東京オリンピック・パラリンピックへの出場を目指す。 <奥付> 発行  視覚障がい乳幼児研究会      会長   山本 利和 【事務局】   京都ライトハウス あいあい教室内     視覚障がい乳幼児研究会  事務局    〒603-8302    京都市北区紫野花ノ坊町11    TEL (075)462-4462    FAX (075)462-4464    E-mail info@abbc88.org